オールドメディアとネット時代の情報検証――認知戦・データサイエンス・OSINTから読み解く誤報と偏向報道【全10回・総合案内】
はじめに――報道する側が、検証される側になった
かつて、新聞社やテレビ局は、社会で起きた出来事を取材し、編集し、人々に伝える情報流通の中心であった。政治、外交、経済、事件、災害、感染症、国際情勢について、多くの市民は新聞やテレビを通じて知るほかなかった。一般の人が政治家の発言全文を確認し、記者会見を最初から最後まで視聴し、報道で使用された統計の原表を調べ、海外記事の原文と日本語報道を比較することは容易ではなかったのである。
この情報環境において、報道機関は何を社会に知らせ、何を知らせないかを決める大きな力を持っていた。どの出来事をトップニュースにするか、どの発言を見出しにするか、どの映像を流すか、誰を専門家として登場させるかによって、人々が認識する社会の姿は大きく変化した。報道機関は権力を監視する存在であると同時に、社会が何を重要だと考えるかを方向付ける存在でもあった。
しかし、インターネット、スマートフォン、SNS、動画配信、ライブ中継、政府や企業による資料公開、オープンデータ、ウェブアーカイブ、生成AIなどの登場によって、この構造は急速に変化した。現在では、政治家や企業経営者の発言を全編映像で確認し、ニュースで省略された前後の文脈を読み、統計数値を再計算し、画像や動画の撮影日時と場所を特定し、削除された記事や変更された見出しを追跡することができる。
報道機関は、社会を一方的に取材し、評価し、監視するだけの存在ではなくなった。いまや新聞やテレビも、市民、研究者、専門家、当事者、データ分析者、動画配信者、OSINT調査者などから監視され、検証される側になったのである。
SNSではしばしば、「オールドメディアの嘘をネット民が暴いた」「テレビの切り取りが全編動画によって発覚した」「新聞の数字が間違っていた」「海外記事の翻訳が原文と異なっていた」といった指摘が拡散される。こうした動きのなかには、既存メディアが見落としていた事実を明らかにし、記事の訂正や番組の謝罪を促したものもある。大手メディアが扱わなかった問題を、当事者や内部告発者の発信が社会問題へと押し上げた例もある。
その意味で、ネットの登場は、報道機関が長く保持してきた情報の独占を崩し、市民が報道を検証する力を拡大した。これは民主主義にとって重要な変化である。権力を監視する報道機関自身もまた、説明責任と透明性を求められなければならないからである。
ただし、本連載は「新聞とテレビはすべて嘘であり、ネットには真実がある」という単純な立場を採らない。ネット上にも、誤報、古い画像の再利用、誤訳、数字の読み違い、偽の内部告発、切り抜き動画、陰謀論、集団的な誤認、組織的な世論誘導が存在する。ネット上で多数の人が同じことを主張しているからといって、それが事実であるとは限らない。
オールドメディアとネットを善悪に分けるだけでは、現代の情報環境を理解することはできない。重要なのは、情報源の名称や政治的立場によって真偽を決めるのではなく、証拠、文脈、データ、調査方法、利害関係、訂正姿勢、再検証可能性によって判断することである。
本連載の中心となる問いは、「誰を信じるべきか」ではない。
中心となる問いは、「その情報を、どのように確かめることができるのか」である。
本連載でいう「オールドメディア」とは何か
「オールドメディア」という言葉は、新聞、テレビ、ラジオ、雑誌など、インターネット以前から存在する報道媒体を批判的に表現する際に使われることが多い。しかし、単に歴史が古い媒体をオールドメディアと呼ぶだけでは、その本質を捉えることはできない。
本連載では、新聞社、テレビ局、通信社、ラジオ局、雑誌社など、組織的な取材・編集・配信機能を持ち、編集部や報道部門が情報の選別を行う既存型メディアを、便宜上「オールドメディア」と呼ぶ。
ただし、既存メディアであること自体が悪いわけではない。専門記者による継続取材、海外特派員網、災害現場での報道、調査報道、法務確認、編集責任など、組織的な報道機関だからこそ担える役割も大きい。
問題となるのは、媒体の古さではなく、情報の選択基準が不透明であること、誤りを十分に訂正しないこと、反対の証拠を扱わないこと、取材対象やスポンサー、政治権力との距離を説明しないこと、視聴者に特定の印象を与える編集を行いながら、それを客観的事実として提示することである。
また、ネット上で誕生した媒体であっても、大規模化し、情報流通を独占し、異なる意見を排除し、訂正に消極的になれば、「オールドメディア的な性質」を持つ可能性がある。そのため、本連載では媒体の新旧よりも、情報がどのように作られ、選別され、流通し、検証されているかに注目する。
本連載でいう「ネット民」とは誰か
「ネット民」という言葉から、匿名掲示板の利用者やSNSで批判的な投稿を行う人々を連想する読者もいるだろう。しかし、本連載では、より広い意味でこの言葉を使用する。
本連載におけるネット民とは、インターネットを通じて情報を受け取るだけでなく、情報を探索し、保存し、比較し、分析し、検証し、その結果を公開する人々を指す。
そこには、一般市民、事件や災害の当事者、内部告発者、研究者、医師、法律家、技術者、データ分析者、市民ジャーナリスト、動画配信者、ブロガー、ファクトチェック団体、OSINT調査者などが含まれる。
ネット民による検証の強みは、異なる専門知識を持つ多数の人々が、同じ情報をそれぞれの視点から調べられる点にある。医療報道を医師が検証し、経済統計をデータ分析者が再計算し、海外記事を語学に詳しい人が原文と比較し、映像の撮影場所を地理に詳しい人が特定する。こうした分散した知識が結び付くことで、報道機関だけでは発見できなかった誤りや矛盾が明らかになることがある。
一方で、集合知は常に正しく機能するわけではない。誤った推測が多数の人によって補強され、無関係な人物が犯人扱いされ、集団攻撃が起こることもある。本連載では、ネット民による検証の可能性を評価すると同時に、その危険性も正面から扱う。
誤報、虚偽報道、偏向報道、切り取り報道の違い
情報を正確に議論するためには、異なる問題をすべて「嘘」と呼ばないことが重要である。
誤報とは、事実確認の不足、取材上の思い込み、翻訳ミス、数値の読み違いなどによって、結果として誤った内容を報じることである。誤報には故意がない場合も多いが、誤りが判明した後に適切に訂正しなければ、報道機関の責任が問われる。
虚偽報道とは、事実と異なることを認識しながら、意図的に誤った情報を報じることである。単なる誤報よりも悪質性が高く、意図を証明する必要があるため、安易に断定すべきではない。
偏向報道とは、特定の立場、価値観、政治的方向性、商業的利益などに基づいて、事実の選択や強調の仕方が一方に偏ることである。ただし、自分と異なる意見を述べているだけで偏向報道と呼ぶことはできない。何が報じられ、何が省略されたか、反対意見が公平に扱われたか、根拠が示されているかを具体的に検討する必要がある。
切り取り報道とは、発言や映像の一部分だけを取り出し、前後の文脈を省略することで、元の趣旨とは異なる印象を与える報道である。すべての編集が切り取り報道なのではない。限られた放送時間や紙面では要約が必要である。問題は、省略によって発言の意味が変わっていないか、全体像を誤認させていないかという点にある。
印象操作とは、事実そのものを直接偽らなくても、見出し、映像、字幕、ナレーション、BGM、写真、専門家の選定などを通じて、受け手に特定の感情や評価を持たせることである。
これらを区別しないまま、気に入らない報道をすべて「嘘」と呼ぶと、批判する側の信頼性も失われる。本連載では、問題の種類を可能な限り分けて検証する。
なぜ認知戦、脳科学、データサイエンス、OSINTが必要なのか
現代の情報問題は、単に新聞記事やテレビ番組の内容だけを見ても理解できない。情報が人間の判断にどのように作用し、どのような仕組みで拡散され、どのような方法で検証できるかを、複数の学問領域から考える必要がある。
認知戦は、人間の知覚、感情、記憶、判断、価値観に働きかけ、意思決定や行動を変えようとする活動を扱う。国家間の対立や選挙だけでなく、企業広報、政治宣伝、SNS上の世論誘導などを理解するうえでも重要である。
認知心理学と脳科学は、人間がなぜ見出しだけで判断し、繰り返された情報を信じ、怒りや恐怖によって冷静さを失い、自分に都合のよい情報を選ぶのかを説明する。
データサイエンスは、世論調査、支持率、感染者数、犯罪統計、経済指標、ランキング、アンケートなど、報道で使われる数字を読み解くために不可欠である。数字は客観的に見えるが、調査対象、分母、期間、質問文、グラフの描き方によって印象は大きく変わる。
OSINTは、公開情報を用いて事実を検証する方法である。画像検索、地図、衛星画像、公開資料、企業情報、ウェブアーカイブ、天候記録などを組み合わせることで、画像や動画の撮影場所、日時、出典を調べることができる。
生成AIは、情報検証を支援する一方で、偽画像、偽音声、偽動画、大量の自動投稿を生み出す道具にもなる。AIが作った情報を、AIだけで完全に判定することはできない。人間による資料確認と判断がこれまで以上に重要になる。
本連載では、これらの領域を統合し、読者が日常生活で実際に使える情報検証の方法を提示する。
全10回の構成
第1回 なぜオールドメディアは信頼を失ったのか――報道機関の情報独占が崩れた日
第1回では、新聞やテレビが情報流通の中心であった時代から、スマートフォンとSNSによって誰もが情報を発信し、検証できる時代へ移行した過程を扱う。
報道機関が何を伝え、何を伝えないかを決定してきた構造、記者会見や政治家の発言を一般市民が全編で確認できなかった時代、海外情報や公文書へのアクセスが限られていた時代を振り返る。
そのうえで、ライブ配信、SNS、動画共有、政府資料の公開、当事者による直接発信が、既存メディアの情報独占をどのように崩したのかを検討する。
また、「オールドメディアだから間違っている」「ネットだから真実である」という二項対立が成り立たない理由も説明する。
第2回 人はなぜ偏った報道を信じるのか――脳科学と認知バイアスの仕組み
第2回では、人間の脳が情報をどのように処理し、なぜ誤情報や偏向した情報に影響されるのかを、脳科学と認知心理学から解説する。
確証バイアス、権威バイアス、フレーミング効果、利用可能性ヒューリスティック、真実性の錯覚、バンドワゴン効果、内集団バイアス、敵対的メディア認知などを取り上げる。
特に、怒り、恐怖、不安、正義感が判断に与える影響と、同じ情報を繰り返し見ることで真実らしく感じる仕組みを説明する。
知識や学歴が高ければ認知バイアスから自由になれるわけではなく、専門家や知識人も、自分の信念に合う情報を選択的に評価する可能性があることを示す。
第3回 ニュースはどのように作られるのか――偏向報道、切り取り、印象操作の構造
第3回では、ニュースが現実をそのまま映すものではなく、取材、選択、編集を通じて構成されるものであることを明らかにする。
ゲートキーピング、アジェンダセッティング、プライミング、フレーミングなどの概念を解説し、報道量、掲載順、見出し、映像、字幕、ナレーション、BGM、専門家の選定などが、視聴者の印象にどのような影響を与えるかを考える。
発言の前後を省略する切り取り、質問内容を見せない編集、街頭インタビューの選択、見出しと本文の不一致なども扱う。
一方で、編集そのものは報道に不可欠であり、編集が行われたというだけで偏向とは言えないことも確認する。問題は、編集によって意味が変わっていないか、反対の証拠が意図的に排除されていないかである。
第4回 オールドメディアはなぜ誤るのか――記者クラブ、スポンサー、組織文化、訂正報道
第4回では、報道機関が誤報や偏った報道を生み出す制度的、商業的、組織的な背景を分析する。
速報競争、裏取り不足、専門知識の不足、通信社情報への依存、発表報道、記者クラブ、スポンサー、芸能事務所、業界団体、政治権力との距離などを取り上げる。
ただし、「すべてが裏で操作されている」という陰謀論的な説明は採らない。取材慣行、組織内の同調圧力、経営上の判断、アクセス維持への配慮などが、意図的な指令がなくても結果的に報道を偏らせる可能性を検討する。
また、誤報が大きく報じられる一方、訂正が小さく扱われる問題、記事修正の履歴が残らない問題、誤りを認めにくい組織心理についても考える。
第5回 ネット民は報道の何を暴いてきたのか――一次情報、集合知、市民ジャーナリズム
第5回では、ネット上の市民や専門家が、報道の誤りや矛盾をどのように発見してきたのかを扱う。
政治家の発言全編、記者会見動画、国会議事録、法律、政府資料、企業の開示資料、裁判資料、学術論文、海外記事の原文などを利用した検証方法を紹介する。
また、過去記事との不整合、見出しと本文の食い違い、翻訳ミス、数字の計算間違い、削除された記事、変更されたタイトルなどを、ネット上の集合知が発見する過程を考察する。
ネットによる検証が、記事の修正、番組内の謝罪、追加取材、社会問題化につながる条件を整理し、市民参加型ジャーナリズムの可能性を示す。
第6回 数字は嘘をつかないが、数字で嘘をつくことはできる――データサイエンスで報道を読む
第6回では、報道に登場する数字、統計、グラフ、世論調査を読み解くためのデータリテラシーを扱う。
平均値、中央値、最頻値、分布、外れ値、母集団、標本、サンプル数、回答率、誤差範囲、相関関係、因果関係、交絡因子などを、一般読者にも分かる形で説明する。
また、「何倍になった」「過去最多」「支持率が急落した」といった表現を読む際に、元の値、分母、調査方法、調査時期を確認する必要性を示す。
縦軸を途中から始めたグラフ、都合のよい期間だけを切り取った比較、人数と割合の混同、相対リスクだけを強調する表現など、数字による印象操作を見抜く方法も紹介する。
第7回 OSINTでニュースを検証する――画像、動画、地図、公文書から事実に迫る方法
第7回では、公開情報を利用してニュースやSNS投稿を検証するOSINTの基本を解説する。
リバース画像検索、元動画の探索、撮影地点の特定、地図や衛星画像との照合、建物、道路、山並み、看板、影、天候、音声などを使った検証方法を紹介する。
さらに、ウェブアーカイブを使って削除・変更された記事を確認する方法、政府資料、法人資料、裁判資料、論文、統計を検索する方法も扱う。
OSINTは強力な手法であるが、断片的な情報から結論を急ぐと誤認を生む。プライバシー、個人特定、捜査妨害、ネット私刑などの倫理的問題にも触れ、一つの証拠だけで断定しない原則を示す。
第8回 世界で進む認知戦とメディア検証――欧米、ロシア、中国、台湾、アジアの事例
第8回では、世界各地で行われている情報戦、認知戦、メディア検証の事例を扱う。
欧米については、イラクの大量破壊兵器をめぐる報道、スノーデン事件、パナマ文書、ケンブリッジ・アナリティカ問題、米国選挙とSNS、党派的メディアなどを取り上げる。
ロシアについては、国外向け情報発信、偽アカウント、ボット、ウクライナ侵攻をめぐる戦時情報、OSINTコミュニティによる映像検証などを扱う。
中国については、情報統制、検閲、検索制限、SNS上の世論誘導、海外向け情報発信、台湾をめぐる認知戦、市民による情報保存と共有などを考察する。
台湾では、市民ファクトチェック、オープンデータ、政府と市民社会の連携、デジタル民主主義を紹介する。さらに、韓国、香港、フィリピン、シンガポールなど、アジア諸国の事例も比較する。
第9回 日本の報道をネットはどう検証してきたのか――災害、感染症、芸能、企業、政治報道
第9回では、日本においてネット上の市民や専門家が既存メディアを検証してきた具体的事例を取り上げる。
東日本大震災、原発事故、新型コロナウイルス、企業不祥事、芸能界の問題、政治家の発言、国会答弁、記者会見、世論調査、海外記事の翻訳などを検証対象とする。
ジャニーズ問題、ビッグモーター問題、宝塚歌劇団をめぐる報道など、当事者、内部告発者、週刊誌、独立系メディア、SNSが、大手テレビ局や新聞社に先行した事例も分析する。
一方で、ネット上で広まったメディア批判が誤認だった事例や、切り取りだと批判された報道が文脈上は妥当だった事例も取り上げる。ネット側に都合のよい成功例だけを並べず、検証そのものを検証する。
第10回 ネット民は常に正しいのか――フェイクニュース、陰謀論、生成AIと情報検証の未来
最終回では、ネットによる情報検証の限界と、生成AI時代の新たな課題を扱う。
古い画像の再利用、誤訳、切り抜き動画、偽の内部告発、まとめサイト、誤った人物特定、ネット私刑、陰謀論、集団的誤認などを取り上げる。
また、ファクトチェック組織にも、検証対象の選択、判定基準、資金源、政治的立場による偏りが生じ得ることを考える。
生成AIが文章、画像、音声、動画を大量に作成し、ボットが自動的に拡散する時代には、見たことや聞いたことだけで真偽を判断することは難しい。ディープフェイク、音声クローン、偽のニュース映像、AIによる自動プロパガンダへの対応を検討する。
最後に、ニュースを見る際のチェックリスト、認知バイアス自己点検、家庭・学校・企業で行うメディアリテラシー教育を提示し、連載全体を総括する。
本連載を通じて身に付けたい五つの力
本連載の目的は、読者に特定の新聞、テレビ局、政党、政治家、専門家、インフルエンサーを信じるよう求めることではない。情報源が誰であっても、同じ基準で検証できる力を身に付けることである。
第一は、一次情報へ近づく力である。発言の全文、会見の全編映像、法律、統計原表、調査報告書、論文、企業資料など、報道の元になった資料を探す力である。
第二は、文脈を読む力である。一文や数秒の映像だけで判断せず、その前後、質問内容、発言の目的、出来事の時系列を確認する力である。
第三は、数字を読む力である。平均、割合、分母、サンプル数、調査方法、グラフの軸、相関と因果を確認し、数字が示す範囲と示していない範囲を区別する力である。
第四は、自分の認知バイアスに気付く力である。自分が支持する人物に有利な情報だけを信じ、嫌う人物に不利な情報だけを拡散していないかを振り返る力である。
第五は、誤りを訂正する力である。メディアリテラシーとは、絶対に間違えないことではない。新しい証拠が示されたときに判断を修正し、誤って共有した情報を訂正できることである。
情報を疑うことと、何も信じないことは違う
既存メディアへの批判が強まるなか、「新聞もテレビも信用できない」「専門家はすべて権力側である」「公式発表は必ず隠蔽している」と考える人もいる。
しかし、あらゆる情報を否定することは、批判的思考ではない。何も信じない状態では、最も強い言葉、最も刺激的な動画、最も自信に満ちた発信者に影響されやすくなる。
健全な懐疑とは、最初から否定することではなく、根拠を確認することである。公式資料だから無条件に信じるのでもなく、公式資料だから無条件に疑うのでもない。ネット情報だから排除するのでもなく、ネット情報だから真実だと考えるのでもない。
証拠の質、情報源の独立性、調査方法、他の説明可能性、訂正の有無を検討し、その時点で最も妥当な判断を行う。そして、新しい証拠が出れば判断を更新する。それが、本連載で目指す情報検証の姿勢である。
おわりに――「誰を信じるか」から「どう確かめるか」へ
オールドメディアの誤報、偏向報道、切り取り、印象操作を検証することは、民主主義社会にとって重要である。
新聞社やテレビ局が政治家、行政、企業、社会組織を監視するならば、新聞社やテレビ局自身もまた、市民から検証されなければならない。報道機関だけが質問し、評価し、批判する側に立ち続ける時代は終わりつつある。
スマートフォンを持つ市民は、出来事の目撃者であり、記録者であり、発信者である。研究者や専門家は、自らの知識を用いて報道を検証できる。データ分析者は統計を再計算し、OSINT調査者は画像や動画の撮影場所を特定できる。当事者は、報道機関を通さずに自らの経験を語ることができる。
これは、報道の民主化と呼ぶことができる大きな変化である。
しかし、市民が発信力を持ったということは、市民もまた、情報発信の責任を負うということである。誤った情報を拡散し、無関係な人物を攻撃し、訂正せずに放置すれば、ネット民もまた、批判しているオールドメディアと同じ過ちを犯す。
必要なのは、オールドメディアを信じることでも、ネットを信じることでもない。
必要なのは、証拠を確かめ、文脈を読み、数字を検討し、自分の感情と認知バイアスを自覚し、誤りが判明したときに訂正することである。
これからの情報社会で問われるのは、「あなたは誰を信じているのか」ではない。
問われるのは、「あなたは、その情報をどのように確かめたのか」である。
参考文献・関連資料
※英文資料の日本語タイトルは、読者の理解を助けるための参考訳であり、正式な邦訳書名が存在しないものを含む。
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投稿者プロフィール

- 市村 修一
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【略 歴】
茨城県生まれ。
明治大学政治経済学部卒業。日米欧の企業、主に外資系企業でCFO、代表取締役社長を経験し、経営全般、経営戦略策定、人事、組織開発に深く関わる。その経験を活かし、激動の時代に卓越した人財の育成、組織開発の必要性が急務と痛感し独立。「挑戦・創造・変革」をキーワードに、日本企業、外資系企業と、幅広く人財・組織開発コンサルタントとして、特に、上級管理職育成、経営戦略策定、組織開発などの分野で研修、コンサルティング、講演活動等で活躍を経て、世界の人々のこころの支援を多言語多文化で行うグローバルスタートアップとして事業展開を目指す決意をする。
【背景】
2005年11月、 約10年連れ添った最愛の妻をがんで5年間の闘病の後亡くす。
翌年、伴侶との死別自助グループ「Good Grief Network」を共同設立。個別・グループ・グリーフカウンセリングを行う。映像を使用した自助カウンセリングを取り入れる。大きな成果を残し、それぞれの死別体験者は、新たな人生を歩み出す。
長年実践研究を妻とともにしてきた「いきるとは?」「人間学」「メンタルレジリエンス」「メンタルヘルス」「グリーフケア」をさらに学際的に実践研究を推し進め、多数の素晴らしい成果が生まれてきた。私自身がグローバルビジネスの世界で様々な体験をする中で思いを強くした社会課題解決の人生を賭ける決意をする。
株式会社レジクスレイ(Resixley Incorporated)を設立、創業者兼CEO
事業成長アクセラレーター
【専門領域】
・レジリエンス(精神的回復力) ・グリーフケア ・異文化理解 ・グローバル人財育成
・東洋哲学・思想(人間学、経営哲学、経営戦略) ・組織文化・風土改革 ・人材・組織開発、キャリア開発
・イノベーション・グローバル・エコシステム形成支援
【主な著書/論文/プレス発表】
「グローバルビジネスパーソンのためのメンタルヘルスガイド」kindle版
「喪失の先にある共感: 異文化と紡ぐ癒しの物語」kindle版
「実践!情報・メディアリテラシー: Essential Skills for the Global Era」kindle版
「こころと共感の力: つながる時代を前向きに生きる知恵」kindle版
「未来を拓く英語習得革命: AIと異文化理解の新たな挑戦」kindle版
「グローバルビジネス成功の第一歩: 基礎から実践まで」Kindle版
「仕事と脳力開発-挫折また挫折そして希望へ-」(城野経済研究所)
「英語教育と脳力開発-受験直前一ヶ月前の戦略・戦術」(城野経済研究所)
「国際派就職ガイド」(三修社)
「セミナーニュース(私立幼稚園を支援する)」(日本経営教育研究所)
【主な研修実績】
・グローバルビジネスコミュニケーションスキルアップ ・リーダーシップ ・コーチング
・ファシリテーション ・ディベート ・プレゼンテーション ・問題解決
・グローバルキャリアモデル構築と実践 ・キャリア・デザインセミナー
・創造性開発 ・情報収集分析 ・プロジェクトマネジメント研修他
※上記、いずれもファシリテーション型ワークショップを基本に実施
【主なコンサルティング実績】
年次経営計画の作成。コスト削減計画作成・実施。適正在庫水準のコントロール・指導を遂行。人事総務部門では、インセンティブプログラムの開発・実施、人事評価システムの考案。リストラクチャリングの実施。サプライチェーン部門では、そのプロセス及びコスト構造の改善。ERPの導入に際しては、プロジェクトリーダーを務め、導入期限内にその導入。組織全般の企業風土・文化の改革を行う。
【主な講演実績】
産業構造変革時代に求められる人材
外資系企業で働くということ
外資系企業へのアプローチ
異文化理解力
経営の志
商いは感動だ!
品質は、タダで手に入る
利益は、タダで手に入る
共生の時代を創る-点から面へ、そして主流へ
幸せのコミュニケーション
古典に学ぶ人生
古典に学ぶ経営
論語と経営
論語と人生
安岡正篤先生から学んだこと
素読のすすめ
経営の突破口は儒学にあり
実践行動学として儒学に学ぶ!~今ここに美しく生きるために~
何のためにいきるのか~一人の女性の死を見つめて~
縁により縁に生きる
縁に生かされて~人は生きているのではなく生かされているのだ!~
看取ることによって手渡されるいのちのバトン
など

