396Hzと世界の音文化──欧米・アジア・日本に広がる音の癒しとメンタルヘルス

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396Hzと世界の音文化──欧米・アジア・日本に広がる音の癒しとメンタルヘルス

本記事は、連載「396Hzの周波数とメンタルヘルス──クラシック音楽・脳科学・瞑想から読み解く『恐れをほどく音』【全7回】」の第4回である。

はじめに 第3回の振り返り──396Hzはクラシック音楽を聴く「姿勢」を変える

第3回では、396Hzとクラシック音楽の関係を扱った。そこで確認した最も重要な点は、バッハ、モーツァルト、ベートーヴェン、ショパン、ドビュッシー、サティ、アルヴォ・ペルトが、396Hzという周波数を意識して作曲したわけではないということである。現代のクラシック演奏では、A=440Hzや442Hz前後の調律が広く用いられる。したがって、「このクラシック作品は396Hzでできている」「バッハは396Hzの治癒力を知っていた」といった言い方は避けなければならない。396Hzを語るうえで大切なのは、数値としての周波数を過剰に神秘化することではなく、その音が私たちの聴き方、身体感覚、呼吸、注意、内省にどのような入口を開くかを丁寧に考えることである。

第3回では、396Hzを「準備音」として使う聴き方を提案した。まず396Hzの単音やドローンを小さな音量で数分聴き、身体の重心、呼吸、胸や腹部の感覚に気づく。そのあと、バッハの秩序、モーツァルトの透明性、ベートーヴェンの内的強さ、ショパンやドビュッシーやサティの夜の静けさ、アルヴォ・ペルトの沈黙へと移る。そうすると、クラシック音楽は単なる「癒しのBGM」ではなく、身体へ戻り、心を整え、恐れや罪悪感に安全な距離から向き合うための音楽的体験になる。396Hzはクラシック音楽を説明し尽くす理論ではない。しかし、396Hzという視点を持つことで、私たちはクラシック音楽の中にある低音、反復、祈り、沈黙、身体性をより深く聴くことができる。

第4回では、視野をさらに広げる。396Hzは、現代のソルフェジオ周波数や瞑想音楽の文脈で語られることが多い。しかし、人類は396Hzという名前を使うはるか以前から、低く持続する音、反復するリズム、祈りの声、鐘の余韻、自然音、沈黙によって、心身を整えてきた。欧米では、音楽療法、サウンドヒーリング、サウンドバス、バイノーラルビート、瞑想音楽が、臨床とウェルネスのあいだで広がっている。アジアでは、中国を除く地域に目を向けると、インドのタンプーラとラーガ、韓国の伽倻琴やパンソリ、東南アジアのガムランや仏教儀礼の響きなど、音と身体と祈りが深く結びついてきた。日本では、声明、尺八、梵鐘、虫の音、雨音、風鈴、間の感性が、心を鎮める音文化として受け継がれてきた。

本稿の目的は、396Hzを世界中の音文化に無理やり当てはめることではない。インド音楽も、韓国伝統音楽も、ガムランも、声明も、尺八も、もともと396Hzのために存在しているわけではない。むしろ重要なのは、396Hzを「恐れをほどく音」として考えたとき、その背後に、人類が古くから大切にしてきた音の知恵が見えてくるということである。低い音は、身体を大地へ戻す。反復する音は、注意を安定させる。祈りの声は、孤独な苦しみを共同体や超越的なものの中に置く。鐘の余韻は、思考の速度を落とす。沈黙は、言葉にできない感情を抱える余白をつくる。396Hzを理解するとは、単に一つの周波数を知ることではなく、人間が音を通じて不安、恐れ、罪悪感、孤独、喪失と向き合ってきた歴史を聴き直すことでもある。

導入として、今回も396Hzの音源を短く聴いてから本文を読み進めるとよい。音量は小さくする。低い響きが自分の身体にどう入るか、胸や腹部にどんな感覚が生まれるかを観察する。今回は、そのあとに各地域の音文化を聴く。396Hzそのものと世界の伝統音楽を混同するのではなく、「低音」「反復」「祈り」「沈黙」「身体性」という共通テーマを探しながら聴くのである。

鑑賞リンク:396 Hz – Pure Frequency
https://www.youtube.com/watch?v=t7cg30hiVkE

第13章 欧米における音楽療法と周波数文化──臨床とウェルネスのあいだ

欧米において、音とメンタルヘルスの関係は、大きく二つの流れの中で発展してきた。一つは、臨床的な音楽療法である。もう一つは、ウェルネス文化としてのサウンドヒーリング、サウンドバス、瞑想音楽、バイノーラルビート、ソルフェジオ周波数の実践である。この二つはしばしば混同されるが、実際にはかなり性格が異なる。音楽療法は、訓練を受けた専門家が、個別の目標に基づき、治療関係の中で音楽を用いる臨床的実践である。米国音楽療法協会は、音楽療法を、資格を持つ専門家が治療関係の中で個別目標を達成するために行う、臨床的かつエビデンスに基づく音楽介入として定義している。これは、単に「癒しの音楽を聴くこと」ではない。歌う、演奏する、即興する、作曲する、歌詞を振り返る、記憶を語る、身体を動かすなど、多様な方法が含まれる。

参考リンク:American Music Therapy Association “What is Music Therapy?”
https://www.musictherapy.org/about/musictherapy/

音楽療法の強みは、音楽そのものだけでなく、関係性、目的、反応、個別性を重視する点にある。不安を抱える人には、不安の調整を目的とした聴取や呼吸の支援が行われることがある。うつ症状を抱える人には、感情表現、活動性の回復、孤立感の緩和を支える音楽活動が行われることがある。認知症ケアでは、なじみのある歌が記憶や会話を引き出すことがある。緩和ケアでは、患者本人や家族の喪失、恐れ、人生の意味づけに音楽が寄り添うことがある。ここで音楽は「効く音」ではなく、「人が自分の感情を安全に表現し、他者とつながり、自分の人生を受け止め直す場」になる。

一方、欧米のウェルネス文化では、サウンドヒーリングやサウンドバスが広く普及してきた。サウンドバスでは、ゴング、クリスタルボウル、シンギングボウル、チャイム、低音ドローン、声などが用いられ、参加者は横になって音の振動に身をゆだねる。これは臨床的音楽療法とは異なるが、現代人が音に求めているものをよく示している。私たちは情報過多の時代に生きている。頭の中は常に通知、予定、評価、比較、ニュース、SNS、仕事の不安で満たされている。言葉が多すぎる時代に、人は言葉以前の振動に戻ろうとしている。サウンドバスが人気を得ている背景には、単なる流行ではなく、身体で休みたい、思考を止めたい、音に包まれたいという現代的な欲求がある。

396Hzは、このウェルネス文化の中で「恐れを解放する周波数」として語られることが多い。しかし、ここでも注意が必要である。サウンドヒーリングやソルフェジオ周波数は、体験として価値がある一方、医学的効果を断定するには慎重でなければならない。396Hzを聴いた人が安心することはありうる。涙が出ることもある。身体の緊張が緩むこともある。しかし、それは必ずしも396Hzという数値だけの効果ではない。音量、音色、空間、暗さ、横になる姿勢、呼吸、集団でいる安心感、施術者の声、期待、儀式性、沈黙、すべてが体験に関わる。したがって、396Hzを欧米のウェルネス文化の中で扱うときには、「周波数が治す」というより、「音の場が人を整える」と考えるほうが誠実である。

欧米の音文化で興味深いのは、科学とスピリチュアルがしばしば隣り合っている点である。一方には、音楽療法のように研究と臨床に基づく実践がある。他方には、クリスタルボウル、チャクラ、ソルフェジオ周波数、波動、エネルギーといった語彙で語られる実践がある。この二つを敵対させる必要はないが、混同してはならない。メンタルヘルスの記事としては、読者に次の区別を示すことが大切である。音楽療法は、専門職による臨床的支援である。サウンドヒーリングは、ウェルネスやリラクゼーションの実践である。396Hz音源の聴取は、セルフケアの一つである。これらは重なり合うが、同じではない。この区別を守ることで、読者は安心して音を生活に取り入れることができる。

欧米の文脈で、396Hz的な聴き方に近いクラシック音楽としては、前回も扱ったアルヴォ・ペルト《Spiegel im Spiegel》が挙げられる。ペルトはエストニア出身の作曲家であり、その音楽は沈黙、祈り、反復、余白を特徴とする。396Hzそのものではないが、「低く落ち着き、心の速度を遅くし、内面を見つめる」聴き方と相性がよい。欧米における現代の祈りの音楽として、ペルトは396Hzのテーマと深く響き合う。

鑑賞リンク:Arvo Pärt – Spiegel im Spiegel
https://www.youtube.com/watch?v=TJ6Mzvh3XCc

また、バッハ《G線上のアリア》も、欧米クラシックにおける「低音の安定」と「秩序」の代表例として再度紹介できる。バッハの音楽は、サウンドヒーリングのように身体を振動で包む音楽ではない。しかし、和声の安定、低音の支え、旋律の持続は、不安な心に構造を与える。欧米における音の癒しを考えるとき、臨床、ウェルネス、宗教音楽、クラシック音楽は、異なる入口でありながら、すべて「心が崩れないための音の場」をつくってきたと言える。

鑑賞リンク:J.S.バッハ《G線上のアリア》Voices of Music版
https://www.youtube.com/watch?v=pzlw6fUux4o

第14章 アジアにおける低音・祈り・身体性──インド、韓国、東南アジアの音文化

アジアの音文化を考えるとき、396Hzという現代的な数値をそのまま当てはめるのではなく、「持続音」「反復」「身体性」「祈り」「共同体」という観点から見る必要がある。中国を除くアジアには、低く持続する音や反復するリズムによって、心身を整える豊かな音文化が存在する。インドのタンプーラ、ラーガ、マントラ。韓国の伽倻琴、パンソリ、サンジョ。インドネシアのガムラン。タイやスリランカ、東南アジア各地の仏教儀礼の声や鐘。これらは、いずれも396Hzとは別の伝統である。しかし、「音を通じて身体を整え、心を共同体や祈りの中に置く」という点では、本連載のテーマと深くつながる。

まずインド音楽において重要なのは、タンプーラの持続音である。タンプーラは、旋律楽器というより、基音と倍音の場をつくる楽器である。インド古典音楽では、ラーガが展開される背後に、タンプーラのドローンが鳴り続ける。この持続音は、単なる伴奏ではない。むしろ、音楽全体の大地である。旋律は動き、歌や楽器は揺れ、即興は展開する。しかし、その背後には常に基音がある。これは、396Hz的なグラウンディングの理解に近い。人間の心も同じである。感情は動く。不安は揺れる。罪悪感は波のように押し寄せる。けれど、どこかに戻れる基音があると、人は崩れにくい。タンプーラの音は、その基音の感覚を身体で教えてくれる。

鑑賞リンク:Tanpura Drone in G – One Hour Meditation
https://www.youtube.com/watch?v=bs73OeQBhRs

インドのラーガは、単なる旋律体系ではなく、時間、季節、情緒、精神状態と結びついてきた音楽文化である。あるラーガは朝に、あるラーガは夜に、あるラーガは雨季に、あるラーガは祈りや愛や憧れの情緒に結びつく。これは、西洋近代の「音楽作品をいつでも同じように鑑賞する」という考え方とは異なる。音楽は、時間と身体と環境の中で意味を持つ。396Hzを日常に取り入れるときにも、この視点は重要である。音は、いつ聴くかによって変わる。朝の396Hzと夜の396Hzは同じではない。不安が強い日の音と、穏やかな日の音は同じではない。音は、聴く人の状態とともに変化する。インド音楽は、この当たり前だが忘れられがちな事実を教えてくれる。

韓国の伝統音楽にも、396Hz的な視点から学べるものが多い。たとえば伽倻琴のサンジョは、ゆっくりしたテンポから始まり、徐々に速度を増し、感情の起伏を展開していく。サンジョは、単に静かで癒される音楽ではない。そこには、哀しみ、緊張、解放、身体的なリズムがある。韓国の音文化では、声や楽器だけでなく、呼吸、身体、掛け声、場の反応が重要になる。これは、メンタルヘルスにおける感情表現と関係が深い。感情は、静かに鎮めるだけが方法ではない。ときには、声に出し、揺らし、リズムに乗せ、身体を通して外へ出す必要がある。396Hzを「恐れをほどく音」として考えるなら、韓国伝統音楽は、恐れや悲しみを身体的な表現へ変える知恵を持っている。

鑑賞リンク:South Korea | Ji Aeri and Kim Woongsik | Gayageum Sanjo
https://www.youtube.com/watch?v=EdOBqPtxGg4

東南アジアの音文化では、インドネシアのガムランが重要である。ガムランは、青銅打楽器、ゴング、鍵盤打楽器、太鼓などによって構成される合奏音楽であり、音の層、反復、周期、余韻が特徴である。西洋音楽のように、一つの旋律が前面に出てドラマを作るというより、複数の音が層をなし、時間が円環的に感じられる。ガムランのゴングは、時間の区切りを告げると同時に、共同体の呼吸を整えるような役割を持つ。音が鳴り、余韻が広がり、次の周期へ入る。この反復と余韻は、396Hz的な「急がない時間」と通じる。

鑑賞リンク:Sound Tracker – Gamelan Indonesia
https://www.youtube.com/watch?v=UEWCCSuHsuQ

ガムランをメンタルヘルスの観点から聴くと、個人の内面だけでなく、共同体のリズムという視点が浮かび上がる。不安や罪悪感は、しばしば個人の問題として抱え込まれる。しかし、人間の心は本来、関係性の中で整う。誰かと同じリズムを共有すること。集団の中で音を聴くこと。反復する音の中で時間を共有すること。これらは、孤立した不安をやわらげる可能性を持つ。396Hzを一人で聴くセルフケアも重要であるが、音の癒しは本来、個人だけのものではない。共同体の中で鳴る音、儀礼の中で鳴る音、祈りの中で鳴る音が、人を支えてきたのである。

アジアの音文化から学べる最も大きなことは、音は「聴く対象」であるだけでなく、「身を置く場」であるということである。タンプーラのドローンに身を置く。ラーガの時間に身を置く。伽倻琴の揺れに身を置く。ガムランの周期に身を置く。仏教儀礼の声や鐘の中に身を置く。396Hzもまた、単に「この周波数を聴く」というより、「低く安定した音の場に身を置く」と考えると理解しやすい。心が恐れで浮き上がっているとき、身体は音の場によって再び地面を感じることがある。アジアの音文化は、その身体的な知恵を豊かに持っている。

第15章 日本における音・沈黙・癒し──声明、尺八、鐘、虫の音、間

日本の音文化は、396Hzのテーマと非常に深く結びつく。なぜなら、日本文化では、音そのものだけでなく、余韻、沈黙、間、気配、自然音が大切にされてきたからである。西洋近代の音楽観では、音楽は楽譜に書かれた音の構成として理解されることが多い。しかし、日本の伝統的な感性では、音が鳴っていない時間、音が消えた後の余韻、遠くから聞こえる微かな響き、雨や虫や風の音、場に漂う静けさも重要である。メンタルヘルスにおいて、この「音と沈黙のあいだ」は非常に大切である。心が疲れている人に必要なのは、常に音で満たされることではない。むしろ、音が少なく、余白があり、沈黙に支えられる時間である。

日本の仏教音楽である声明は、声を通じて祈りと身体を結びつける実践である。声明の低く長く伸びる声は、言葉の意味だけでなく、身体の振動として響く。声を出す側にとっては呼吸の実践であり、聴く側にとっては音の中に身を置く体験である。396Hz的な観点から見ると、声明の魅力は、低く持続する声が、頭の中の思考を静め、身体をゆっくりと場に戻していくところにある。もちろん、声明は396Hzのためにあるわけではない。宗教的、儀礼的、歴史的な文脈を持つ。しかし、その響きの中には、現代人が忘れがちな「声によって心身を整える」知恵がある。

鑑賞リンク:Shomyo: Buddhist Ritual Chant
https://www.youtube.com/watch?v=Qe7Rer-q0eg

尺八もまた、日本の音文化における重要な存在である。尺八本曲には、単なる器楽演奏を超えた精神性がある。息を吹き込む。音がかすれる。沈黙が生まれる。音が立ち上がり、消える。尺八の音は、完全に滑らかではない。揺れ、息、間、かすれがある。これは、人間の心に近い。不安や罪悪感を抱える人の心も、完全に整ってはいない。かすれ、揺れ、途切れ、詰まる。尺八の音は、その不完全さを美しく響かせる。396Hz的な聴き方で尺八を聴くなら、音の高さよりも、息の質に注意するとよい。息がどのように音になるか。音がどのように沈黙へ戻るか。そこに、呼吸と心の関係が現れている。

鑑賞リンク:Kokū (Honkyoku) | Shakuhachi
https://www.youtube.com/watch?v=2JUDH_e3NLY

梵鐘の音も、396Hzのテーマと深く関係する。寺院の鐘は、一打で空間を変える。鐘が鳴る。低く深い音が広がる。音はすぐには消えず、余韻として空間に残る。その余韻を聴いていると、思考の速度が少し遅くなる。鐘の音は、音そのものよりも、音が消えていく過程に意味がある。これはメンタルヘルスにおいて非常に重要である。不安な人の頭の中では、思考が次から次へと鳴り続ける。鐘の余韻を聴くことは、一つの音が鳴り、広がり、消えていくまで待つ練習になる。つまり、反応を急がない練習である。

鑑賞リンク:Sound of Japan: Buddhist Bell, “Bonshō”
https://www.youtube.com/watch?v=QoTGrQOww0I

日本の自然音も見逃せない。虫の音、雨音、風鈴、川のせせらぎ、波の音、竹林を抜ける風。これらは、音楽作品ではない。しかし、日本人の感性において、自然音はしばしば心を整える音として受け取られてきた。特に虫の音は、日本文化において秋の情緒、もののあはれ、季節の移ろいと結びついている。雨音は、外界との距離をつくり、内省の時間を与える。風鈴は、風という見えないものを音として感じさせる。こうした自然音は、396Hzのような特定周波数とは異なるが、「音によって身体を今ここに戻す」という意味では非常に近い。人は雨音を聴きながら、未来の心配から少し離れることがある。虫の音を聴きながら、季節の中に自分を置き直すことがある。風鈴の音で、暑さの中に一瞬の涼を感じることがある。

日本文化において重要な概念に「間」がある。間とは、単なる空白ではない。音と音のあいだ、動きと動きのあいだ、言葉と言葉のあいだにある、意味を帯びた余白である。メンタルヘルスにおいても、間は必要である。感情が起きた瞬間に反応しない間。不安な考えが浮かんだとき、それをすぐ信じない間。罪悪感が湧いたとき、自分を責める前に立ち止まる間。396Hzを聴く実践も、この間をつくるためにある。音を聴き、呼吸を感じ、すぐに結論を出さない。恐れを感じても、それを消そうとしない。罪悪感が出ても、すぐに自分を裁かない。音と沈黙のあいだに、心を置くのである。

日本における音の癒しは、派手ではない。強い効果を主張しない。むしろ、小さく、静かで、余白がある。これは、現代のメンタルヘルスにとって非常に重要である。私たちはしばしば、「効くもの」「すぐ変わるもの」「成果が出るもの」を求める。しかし、心の深い疲れは、すぐには変わらない。悲しみも、罪悪感も、恐れも、一度の音楽で消えるわけではない。だからこそ、声明、尺八、梵鐘、自然音、間の文化は、急がない回復を教えてくれる。396Hzもまた、そのように使うべきである。すぐに恐れを消すためではなく、恐れと共にいられる静かな時間をつくるために使うのである。

第4回の実践ワーク 世界の音文化を396Hz的に聴き比べる

第4回の実践として、世界の音文化を396Hz的に聴き比べるワークを提案する。まず396Hzの単音を3分聴く。音量は小さめにし、足裏、呼吸、胸、腹部の感覚を観察する。次に、インドのタンプーラを5分聴く。持続音が身体にどのように作用するかを感じる。次に、韓国の伽倻琴サンジョを5分聴く。音の揺れやリズムが感情にどのように触れるかを観察する。次に、ガムランを5分聴く。反復と周期が自分の時間感覚をどう変えるかを感じる。最後に、日本の尺八または梵鐘を5分聴く。音が消えた後の沈黙に注意を向ける。すべて聴き終えたら、紙に一文だけ書く。「今日の自分に一番合っていた音は何だったか」。この問いに正解はない。大切なのは、世界の音文化を知識として眺めるだけでなく、自分の身体がどう反応するかを聴き取ることである。

次回予告

次回、第5回では「396Hzを日常に取り入れる方法──不安・罪悪感・眠れない夜のセルフケア実践」を扱う。第1回から第4回までで、396Hzの基礎、脳・身体・感情との関係、クラシック音楽への応用、世界の音文化とのつながりを見てきた。第5回では、それらを日常生活の中でどう使うかを具体的に考える。朝、昼、夜で音をどう使い分けるか。不安が強い日にどう聴くか。罪悪感が出てきたとき、どのように音とジャーナリングを組み合わせるか。眠れない夜に、396Hzやクラシック音楽を睡眠薬のようにではなく、自己批判を和らげる環境としてどう使うかを実践的に示す。

参考文献・関連資料

American Music Therapy Association. What is Music Therapy?
音楽療法を、資格を持つ専門家が治療関係の中で個別目標に向けて用いる臨床的・エビデンスに基づく音楽介入として定義している。
https://www.musictherapy.org/about/musictherapy/

Music therapy for patients with depression: systematic review.
うつ病に対する音楽療法の効果を検討したシステマティックレビューである。
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC12451534/

Music therapy for the treatment of anxiety: a systematic review with multilevel meta-analyses.
不安に対する音楽療法の効果を検討したレビューである。
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC12179724/

Akimoto, K., Hu, A., Yamaguchi, T., & Kobayashi, H. Effect of 528 Hz Music on the Endocrine System and Autonomic Nervous System.
528Hz音楽と440Hz音楽の比較を行った小規模研究であり、周波数と自律神経・気分状態の関係を考えるうえで参考になる。
https://www.scirp.org/html/2-8204397_87146.htm

鑑賞リンク:396 Hz – Pure Frequency
396Hzを単音として体験するための導入音源として使用できる。
https://www.youtube.com/watch?v=t7cg30hiVkE

鑑賞リンク:Arvo Pärt – Spiegel im Spiegel
欧米における現代の祈り、沈黙、反復、余白を感じる作品として紹介した。
https://www.youtube.com/watch?v=TJ6Mzvh3XCc

鑑賞リンク:J.S.バッハ《G線上のアリア》Voices of Music版
低音の安定、旋律の持続、和声の秩序を体験するためのクラシック音楽として紹介した。
https://www.youtube.com/watch?v=pzlw6fUux4o

鑑賞リンク:Tanpura Drone in G – One Hour Meditation
インド音楽における持続音、基音、身体を支える響きの例として紹介した。
https://www.youtube.com/watch?v=bs73OeQBhRs

鑑賞リンク:South Korea | Ji Aeri and Kim Woongsik | Gayageum Sanjo
韓国伝統音楽における伽倻琴サンジョの揺れ、リズム、身体性の例として紹介した。
https://www.youtube.com/watch?v=EdOBqPtxGg4

鑑賞リンク:Sound Tracker – Gamelan Indonesia
インドネシアのガムランにおける反復、周期、余韻、共同体的リズムの例として紹介した。
https://www.youtube.com/watch?v=UEWCCSuHsuQ

鑑賞リンク:Shomyo: Buddhist Ritual Chant
日本の仏教声明における低く持続する声、祈り、身体性の例として紹介した。
https://www.youtube.com/watch?v=Qe7Rer-q0eg

鑑賞リンク:Kokū (Honkyoku) | Shakuhachi
尺八本曲における息、間、かすれ、沈黙の例として紹介した。
https://www.youtube.com/watch?v=2JUDH_e3NLY

鑑賞リンク:Sound of Japan: Buddhist Bell, “Bonshō”
梵鐘の低い響き、余韻、沈黙を体験するための音源として紹介した。
https://www.youtube.com/watch?v=QoTGrQOww0I

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投稿者プロフィール

市村 修一
市村 修一
【略 歴】
茨城県生まれ。
明治大学政治経済学部卒業。日米欧の企業、主に外資系企業でCFO、代表取締役社長を経験し、経営全般、経営戦略策定、人事、組織開発に深く関わる。その経験を活かし、激動の時代に卓越した人財の育成、組織開発の必要性が急務と痛感し独立。「挑戦・創造・変革」をキーワードに、日本企業、外資系企業と、幅広く人財・組織開発コンサルタントとして、特に、上級管理職育成、経営戦略策定、組織開発などの分野で研修、コンサルティング、講演活動等で活躍を経て、世界の人々のこころの支援を多言語多文化で行うグローバルスタートアップとして事業展開を目指す決意をする。

【背景】
2005年11月、 約10年連れ添った最愛の妻をがんで5年間の闘病の後亡くす。
翌年、伴侶との死別自助グループ「Good Grief Network」を共同設立。個別・グループ・グリーフカウンセリングを行う。映像を使用した自助カウンセリングを取り入れる。大きな成果を残し、それぞれの死別体験者は、新たな人生を歩み出す。
長年実践研究を妻とともにしてきた「いきるとは?」「人間学」「メンタルレジリエンス」「メンタルヘルス」「グリーフケア」をさらに学際的に実践研究を推し進め、多数の素晴らしい成果が生まれてきた。私自身がグローバルビジネスの世界で様々な体験をする中で思いを強くした社会課題解決の人生を賭ける決意をする。

株式会社レジクスレイ(Resixley Incorporated)を設立、創業者兼CEO
事業成長アクセラレーター

【専門領域】
・レジリエンス(精神的回復力) ・グリーフケア ・異文化理解 ・グローバル人財育成 
・東洋哲学・思想(人間学、経営哲学、経営戦略) ・組織文化・風土改革  ・人材・組織開発、キャリア開発
・イノベーション・グローバル・エコシステム形成支援

【主な著書/論文/プレス発表】
「グローバルビジネスパーソンのためのメンタルヘルスガイド」kindle版
「喪失の先にある共感: 異文化と紡ぐ癒しの物語」kindle版
「実践!情報・メディアリテラシー: Essential Skills for the Global Era」kindle版
「こころと共感の力: つながる時代を前向きに生きる知恵」kindle版
「未来を拓く英語習得革命: AIと異文化理解の新たな挑戦」kindle版
「グローバルビジネス成功の第一歩: 基礎から実践まで」Kindle版
「仕事と脳力開発-挫折また挫折そして希望へ-」(城野経済研究所)
「英語教育と脳力開発-受験直前一ヶ月前の戦略・戦術」(城野経済研究所)
「国際派就職ガイド」(三修社)
「セミナーニュース(私立幼稚園を支援する)」(日本経営教育研究所)

【主な研修実績】
・グローバルビジネスコミュニケーションスキルアップ ・リーダーシップ ・コーチング
・ファシリテーション ・ディベート ・プレゼンテーション ・問題解決
・グローバルキャリアモデル構築と実践 ・キャリア・デザインセミナー
・創造性開発 ・情報収集分析 ・プロジェクトマネジメント研修他
※上記、いずれもファシリテーション型ワークショップを基本に実施

【主なコンサルティング実績】
年次経営計画の作成。コスト削減計画作成・実施。適正在庫水準のコントロール・指導を遂行。人事総務部門では、インセンティブプログラムの開発・実施、人事評価システムの考案。リストラクチャリングの実施。サプライチェーン部門では、そのプロセス及びコスト構造の改善。ERPの導入に際しては、プロジェクトリーダーを務め、導入期限内にその導入。組織全般の企業風土・文化の改革を行う。

【主な講演実績】
産業構造変革時代に求められる人材
外資系企業で働くということ
外資系企業へのアプローチ
異文化理解力
経営の志
商いは感動だ!
品質は、タダで手に入る
利益は、タダで手に入る
共生の時代を創る-点から面へ、そして主流へ
幸せのコミュニケーション
古典に学ぶ人生
古典に学ぶ経営
論語と経営
論語と人生
安岡正篤先生から学んだこと
素読のすすめ
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実践行動学として儒学に学ぶ!~今ここに美しく生きるために~
何のためにいきるのか~一人の女性の死を見つめて~
縁により縁に生きる
縁に生かされて~人は生きているのではなく生かされているのだ!~
看取ることによって手渡されるいのちのバトン
など
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