396Hzとは何か──528Hzとの違いから読み解く「恐れをほどく音」とメンタルヘルス

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396Hzとは何か──528Hzとの違いから読み解く「恐れをほどく音」とメンタルヘルス

本記事は、連載「396Hzの周波数とメンタルヘルス──クラシック音楽・脳科学・瞑想から読み解く『恐れをほどく音』【全7回】」の第1回である。

はじめに 528Hzから396Hzへ──癒しの光から、心の奥へ降りる音へ

2026年3月9日のブログ記事「528Hzの周波数とメンタルヘルス──クラシック音楽・脳科学・瞑想から読み解く音の治療」では、528Hzという周波数を、音楽、脳科学、瞑想、ストレスケア、クラシック音楽の観点から考察した。528Hzは、現代のウェルネスや瞑想音楽の領域では「愛」「修復」「調和」「変容」といった言葉とともに語られることが多く、読者にとっても比較的明るく、開かれた印象を持ちやすい周波数である。そこでは、音が心をやさしく開き、緊張した神経をほどき、内面に光を入れるような働きを持ちうることを扱った。しかし、人間のメンタルヘルスは、光だけでは回復しない。心が疲れているとき、私たちは必ずしも明るい音、前向きな言葉、希望に満ちたメロディだけを求めているわけではない。むしろ、深い不安、言葉にならない恐れ、長く抱えてきた罪悪感、身体の奥に沈んだ緊張に向き合うには、明るさよりも、低く、安定し、急がせない音が必要になることがある。今回から始まる全7回の連載では、そのような「心の底に降りていく音」として、396Hzという周波数を取り上げる。

396Hzは、いわゆるソルフェジオ周波数の文脈において、「恐れからの解放」「罪悪感からの解放」と結びつけて紹介されることが多い。こうした表現は魅力的である一方、注意も必要である。396Hzを聴けば不安障害が治る、罪悪感が消える、トラウマが解放される、と断定することはできない。医学的・心理学的に見れば、特定の周波数だけが人の心を一律に治療するという理解は、あまりに単純である。音楽療法は、専門的な訓練を受けた音楽療法士が、個別の目標を持ち、治療関係の中で音楽介入を行う臨床的・エビデンスに基づく実践であると定義されている。つまり、音楽療法と、YouTubeなどで396Hz音源を聴くセルフケアとは同じではない。そのため本連載では、396Hzを「病を治す魔法の周波数」としてではなく、「不安、恐れ、罪悪感、身体のこわばりに気づき、呼吸と身体感覚を通じて自分を取り戻すための音の入口」として扱う。

528Hzの記事を「癒しの光」と呼ぶなら、本連載で扱う396Hzは「癒しの大地」である。528Hzは、心を開き、外へ向かわせる音として語りやすい。396Hzは、それとは反対に、下へ降りる音である。頭の中で渦巻く不安から、足裏の感覚へ。未来への恐れから、今ここにある呼吸へ。自己批判の言葉から、胸や腹部に残る緊張へ。396Hzを聴くとは、気分を無理に上げることではない。むしろ、気分が上がらない自分、怖がっている自分、後悔している自分、まだ許せずにいる自分を、音の中で静かに見つめ直すことである。メンタルヘルスにおける本当の回復とは、いつも明るくなることではない。恐れを消し去ることでもない。恐れに飲み込まれず、恐れと共にいられる力を育てることである。396Hzの意味は、まさにそこにある。

本連載の第1回では、396Hzとは何か、528Hzと何が違うのか、なぜ396Hzが「恐れをほどく音」として語られるのかを整理する。第2回では、音が脳、身体、自律神経、感情、罪悪感にどのように関わるかを考える。第3回では、バッハ、モーツァルト、ベートーヴェン、ショパン、ドビュッシー、サティ、アルヴォ・ペルトなどのクラシック音楽を、396Hz的な聴き方から読み解く。第4回では、欧米、アジア、中国を除く地域、日本の音文化を比較しながら、低音、祈り、沈黙、身体性の意味を考察する。第5回では、不安、罪悪感、眠れない夜に396Hzをどう使うかを実践的に示す。第6回では、科学、スピリチュアル、倫理の境界線を扱い、過剰な効能表現や医療代替的な誤解を避ける。第7回では、7日間プログラム、30分セッション、チェックリストを提示し、連載全体を完結させる。

最初に聴いておきたい音源としては、396Hzの純音またはドローン音源がある。396Hzの単音を長く鳴らす音源は、音楽作品として楽しむというより、自分の身体反応を観察するための基準音として使うとよい。ここで大切なのは、音源の説明文に「恐れが消える」「罪悪感が解放される」と書かれていても、それをそのまま医学的事実として受け取らないことである。まずは、音が低く感じられるか、落ち着くか、少し重く感じるか、呼吸が変化するか、胸や腹部にどのような感覚が生まれるかを観察するのである。

鑑賞リンク:396 Hz – Pure Frequency
https://www.youtube.com/watch?v=t7cg30hiVkE

序章 396Hzとは何か──Hz、周波数、ソルフェジオ、音楽療法の基礎知識

396Hzを理解するためには、まず「Hz」という言葉から確認する必要がある。Hz、すなわちヘルツとは、1秒間に何回振動するかを示す単位である。音は空気の振動であり、振動数が多ければ高い音として、少なければ低い音として知覚される。396Hzとは、1秒間に396回振動する音を意味する。ただし、ここで注意すべきなのは、「396Hzの音」と「396Hzに調整された音楽」と「396Hzをテーマにした瞑想音楽」は同じではないという点である。純粋な396Hzの単音は、一定の高さで鳴り続ける基準音である。一方、396Hz瞑想音楽と呼ばれるものは、396Hzの音を背景に含んでいる場合もあれば、楽曲全体の雰囲気として396Hzを掲げている場合もある。また、クラシック音楽を396Hzで聴くという場合も、原曲が396Hzで作曲されたという意味ではなく、音源制作上のチューニングや、聴取体験としての低く安定した響きを指している場合が多い。

ソルフェジオ周波数とは、現代のヒーリング音楽や瞑想音楽の領域で広く語られる一連の周波数群であり、396Hz、417Hz、528Hz、639Hz、741Hz、852Hzなどが代表的に挙げられる。396Hzは、その中で「恐れと罪悪感からの解放」と結びつけられ、528Hzは「変容」「愛」「修復」と結びつけられることが多い。しかし、これらの意味づけは、現代のウェルネス文化、瞑想実践、スピリチュアルな解釈の中で広がってきたものであり、標準医学において確立された治療分類ではない。したがって、396Hzという言葉に接するときには、二つの態度が必要である。一つは、音の持つ主観的な力を軽視しないことである。ある音が人を安心させる、涙を誘う、呼吸を深める、記憶を呼び起こすことは現実に起こる。もう一つは、その体験を科学的に断定しすぎないことである。ある人にとって396Hzが落ち着く音であっても、別の人にとっては重く、不快で、圧迫感を伴う音かもしれない。

音楽療法と396Hz音源の違いも重要である。音楽療法は、音楽を使うという点では396Hz音源の聴取と似ているように見えるが、本質的には異なる。音楽療法では、対象者の状態、目標、背景、反応、関係性が重視される。音楽は、単なるBGMではなく、表現、対話、記憶、身体運動、呼吸、感情の調整を支える専門的な媒体となる。近年の研究でも、音楽療法はうつ症状や不安症状に対して有望な介入として検討されているが、そこでも重要なのは、音楽そのものだけでなく、介入の方法、対象者、治療関係、継続性である。つまり、「音楽は心に作用しうる」ということと、「396Hzだけが不安や罪悪感を解決する」ということは、厳密に分けて考えなければならない。

528Hzについては、2018年に9名の健康な参加者を対象として、528Hz音楽と440Hz音楽の影響を比較した小規模研究があり、528Hz音楽を聴いた後に緊張・不安や気分状態の変化が報告されている。ただし、この研究は参加者数が少なく、そこから一般的な治療効果を大きく主張することはできない。それでも、音の周波数、音楽、心理状態、自律神経、内分泌系の関係を考える入口としては興味深い。396Hzについても同じである。396Hzそのものに関する臨床的エビデンスは十分とは言えない。しかし、低く安定した音、反復する響き、ゆっくりしたテンポ、穏やかな音色が、呼吸、注意、身体感覚、情動調整に関わりうるという観点から考えれば、396Hzはメンタルヘルス実践の一つの入口になりうる。

この序章で強調したいのは、396Hzを「信じるか、信じないか」という二分法で扱わないことである。周波数に関心を持つ人の中には、科学的説明を求める人もいれば、瞑想的・スピリチュアルな体験を大切にする人もいる。どちらか一方を排除する必要はない。ただし、メンタルヘルスの文脈で扱う以上、苦しんでいる人に過剰な期待を抱かせてはならない。396Hzは、不安を消し去る保証ではない。罪悪感を自動的に浄化する装置でもない。むしろ、それは「自分の中に何が起きているか」を聴き取るための音である。音を聴くとは、外から入ってくる振動を受け取ることであると同時に、自分の内側の振動に気づくことでもある。396Hzの本当の価値は、外の音よりも、内側の反応を聴くところにある。

ここで、528Hzとの比較のために、528Hzの純音または瞑想音源を一度聴いておくとよい。528Hzは、396Hzより高く、明るく、上方へ広がる印象を持つ人が多い。もちろん感じ方には個人差があるが、396Hzと528Hzを聴き比べることで、自分の身体が低い音と高い音にどう反応するかを観察しやすくなる。

鑑賞リンク:528Hz Pure Tone
https://www.youtube.com/watch?v=vRh04jz_30E

第1章 396Hzの心理的イメージ──恐れ、罪悪感、身体の緊張に向かう音

396Hzが「恐れをほどく音」として語られる理由を理解するには、まず恐れとは何かを考える必要がある。恐れとは、危険を察知した心身の反応である。私たちは危険を感じると、身体を固くし、呼吸を浅くし、周囲に注意を向け、逃げるか、戦うか、固まるかを無意識に準備する。これは人間が生き延びるために備えてきた重要な仕組みである。しかし、現代の生活では、命に直結する危険がない場面でも、心身は恐れの反応を起こす。仕事で失敗するのではないか。人に嫌われるのではないか。老後に生活できないのではないか。大切な人を失うのではないか。過去の過ちを責められるのではないか。こうした不安は、実際には目の前に敵がいなくても、身体の中では本物の危険反応として現れる。

恐れは、頭の中だけにあるのではない。胸が締めつけられる。喉が詰まる。胃が重くなる。肩が上がる。背中が硬くなる。手足が冷える。呼吸が浅くなる。人は「不安だ」と考える前に、すでに身体で不安を感じていることが多い。396Hzのような低めの音を聴く意味は、ここにある。低く、持続的で、急がない音は、意識を頭から身体へ戻しやすい。もちろん、396Hzだから必ずそうなるわけではない。しかし、低いドローン音やゆっくりした響きは、身体の下方、足元、腹部、骨盤、背中への注意を促すことがある。これは、グラウンディングと呼ばれる心理的実践と相性がよい。グラウンディングとは、過去や未来に飛びすぎた意識を、今ここにある身体感覚へ戻すことである。

罪悪感もまた、396Hzの重要なテーマである。罪悪感とは、自分が何か悪いことをした、誰かを傷つけた、期待に応えられなかった、自分は許されない、という感覚である。罪悪感には健全な側面がある。人は罪悪感を通じて、自分の行動を振り返り、謝罪し、修復し、他者との関係を保つ。しかし、罪悪感が過剰になると、それは責任感ではなく自己攻撃になる。「あの時、自分がもっと頑張っていれば」「自分のせいでこうなった」「自分は幸せになってはいけない」「自分には価値がない」。こうした言葉が心の中で繰り返されると、罪悪感は人格全体を覆う影のようになる。396Hzを「罪悪感からの解放」と呼ぶなら、それは罪悪感を消してしまうという意味ではなく、罪悪感と自己否定を区別するための音として理解すべきである。

ここで重要なのは、396Hzを聴くときに「何かが起こらなければならない」と期待しすぎないことである。音楽や周波数に関心を持つと、人はどうしても効果を求める。リラックスできたか。不安が減ったか。涙が出たか。眠れたか。気分が変わったか。しかし、メンタルヘルスにおける音の使い方は、成果を急がないところに意味がある。396Hzを5分聴いて、何も変わらない日があってよい。少し重く感じる日があってよい。落ち着く日もあれば、落ち着かない日もある。大切なのは、「自分はこの音にどう反応しているか」を見ることである。音は鏡である。396Hzが恐れを消すのではない。396Hzを聴くことで、自分の中にある恐れの形が少し見えやすくなるのである。

この段階で、クラシック音楽を一曲だけ組み合わせるなら、バッハ《G線上のアリア》が適している。厳密には、この作品が396Hzで作られたという意味ではない。しかし、ゆったりしたテンポ、長く伸びる旋律、低音の安定、和声の秩序は、不安な心を急がせず、身体を静かに支える。396Hzの純音を数分聴いたあとに《G線上のアリア》を聴くと、単音から音楽へ、振動から旋律へ、身体感覚から感情へと自然に移行しやすい。

鑑賞リンク:J.S.バッハ《G線上のアリア》Voices of Music版
https://www.youtube.com/watch?v=pzlw6fUux4o

396Hzの心理的イメージを、もう少し具体的に言えば、それは「地下室に降りる音」である。私たちは普段、心の明るい部屋で生活しようとする。仕事をし、人と話し、予定をこなし、笑顔を作り、何とか日常を回す。しかし、心の下の階には、片づけられなかった感情が置かれている。失敗への恐れ。誰にも言えない後悔。大切な人に対する申し訳なさ。あの時の怒り。見捨てられる不安。自分は十分ではないという感覚。396Hzは、その地下室の扉を乱暴に開ける音ではない。むしろ、階段の下に小さな灯を置く音である。今すぐ全部を見なくてよい。ただ、そこに何かがあることを認める。これが、396Hzをメンタルヘルスに用いる最初の態度である。

ここで一つ、簡単な聴取法を紹介したい。396Hzの音源を小さな音量で流し、椅子に座り、足裏を床につける。目は閉じてもよいが、不安が強い人は開けたままでよい。最初の1分は、音を評価せずに聴く。次の1分は、呼吸を変えようとせず、吸う息と吐く息を観察する。次の1分は、身体の中で一番緊張している場所を探す。胸、喉、腹、肩、背中、額、手のひら、どこでもよい。次の1分は、「私はいま、何を怖がっているのか」と心の中で静かに問いかける。最後の1分は、部屋の中にある安全なものを三つ見る。机、窓、カップ、本、照明、床。これで十分である。音楽を使ったセルフケアは、長時間行えばよいというものではない。むしろ短く、安全に、途中でやめられる形で行うことが大切である。

第2章 528Hzとの違い──「修復の周波数」と「解放の周波数」をどう読み分けるか

528Hzと396Hzは、どちらもソルフェジオ周波数の文脈で語られるが、心理的な印象はかなり異なる。528Hzは、一般に「愛の周波数」「奇跡の周波数」「DNA修復」などの言葉とともに語られることがある。ただし、こうした表現の中には科学的に慎重な扱いが必要なものも多い。528Hz音楽に関する小規模研究は存在するが、それをもって大きな治療効果を断定することはできない。それでも、528Hzという周波数が人々を惹きつける理由は理解できる。528Hzには、上へ向かう、広がる、明るくなる、心を開く、といったイメージがある。疲れた心に光が入るような印象を持つ人もいるだろう。

それに対して396Hzは、上へ向かう音というより、下へ降りる音である。528Hzが胸を開く音だとすれば、396Hzは腹に戻る音である。528Hzが「私はもう一度、世界とつながれるかもしれない」という感覚を支えるとすれば、396Hzは「私はまだ怖がっている。しかし、その怖さを見捨てなくてよい」という感覚を支える。528Hzが回復の光なら、396Hzは回復の土台である。光だけでは人は立てない。足元が必要である。大地が必要である。396Hzの役割は、心を高揚させることではなく、心が崩れないように下から支えることにある。

メンタルヘルスの実践では、この使い分けが重要である。不安が強すぎるとき、人は明るすぎる音楽を負担に感じることがある。元気を出そう、前向きになろう、感謝しよう、許そう、といったメッセージが、かえって苦しくなることもある。なぜなら、その人の心はまだ明るさに向かう準備ができていないからである。そういうとき、396Hz的な低く安定した音は、「今は無理に明るくならなくてよい」と伝える。これは非常に重要である。回復には順番がある。恐れを抱えたまま、いきなり希望へ跳ぶことはできない。まず必要なのは、恐れている自分を責めないことである。396Hzは、その最初の一歩に向いている。

一方で、396Hzだけに留まり続けることにも注意が必要である。低い音は安心感を与えることがあるが、人によっては気分を重くすることもある。罪悪感や後悔に向き合う時間は必要だが、そこに沈み込みすぎると、反芻思考が強まる場合もある。だからこそ、528Hzと396Hzは対立関係ではなく、往復関係として使うべきである。たとえば、夜に396Hzを聴いて身体を落ち着ける。翌朝に528Hzや明るめのクラシック音楽を聴いて、少し外へ向かう。あるいは、396Hzで不安の身体感覚に気づいたあと、バッハで秩序を取り戻し、モーツァルトで心に透明な空間を作る。このように、音を一つの固定された効能としてではなく、心の状態に合わせて選ぶことが大切である。

ここで、528Hzと396Hzの違いを読者自身が体験するために、短い比較聴取をすすめたい。最初に396Hzの純音またはドローンを3分聴く。その後、1分間無音にする。次に528Hzの純音または瞑想音源を3分聴く。そして、身体のどこに意識が向かったかを記録する。396Hzでは足元、腹部、胸の重さ、背中、椅子との接触に気づくかもしれない。528Hzでは胸、顔、頭、空間の広がり、明るさに意識が向かうかもしれない。もちろん、逆の人もいる。重要なのは、一般論ではなく自分の反応である。音のリテラシーとは、流行の周波数を信じることではない。自分の心身がどの音にどう反応するかを聴き分ける力である。

528Hzとの対比をさらに深めるために、ここではアルヴォ・ペルト《Spiegel im Spiegel》も紹介しておきたい。この作品は396Hz音源ではないが、反復、静けさ、余白、祈りの感覚を持つ。396Hz的な「下へ降りる音」と、528Hz的な「透明に開く音」の中間にあるような作品である。音数が少なく、過剰に感情を押しつけないため、心が疲れているときにも聴きやすい。

鑑賞リンク:Renaud Capuçon plays Arvo Pärt: Spiegel im Spiegel / Warner Classics
https://www.youtube.com/watch?v=n37bNmVggtU

528Hzの記事から396Hzの連載へ進む意味は、単に別の周波数を紹介することではない。それは、癒しの理解を一段深めることである。癒しという言葉は、しばしば「気持ちよくなること」「リラックスすること」「元気になること」と混同される。しかし、本当の癒しには、不快な感情と向き合う力が含まれる。悲しみ、恐れ、怒り、罪悪感、恥、後悔、孤独。これらをすべて消そうとするのではなく、少しずつ抱えられるようになること。それがメンタルヘルスにおける回復である。528Hzが、心の窓を開ける音だとすれば、396Hzは、心の床に座る音である。窓を開ける前に、まず床に座る必要がある日もある。人は、立ち上がる前に、座り直さなければならないことがある。

第1回の結論として、396Hzは「恐れを消す音」ではない。むしろ、恐れを感じている自分を見捨てないための音である。罪悪感を消す音でもない。罪悪感の奥にある責任、悲しみ、愛情、後悔を、自己攻撃ではなく理解へ変えるための音である。528Hzが「開く」音だとすれば、396Hzは「戻る」音である。身体へ戻る。呼吸へ戻る。足元へ戻る。いまここへ戻る。そして、自分自身へ戻る。これからの連載では、この396Hzという入り口から、脳、身体、感情、クラシック音楽、世界の音文化、日常実践、安全な使い方、そして7日間のプログラムへと進んでいく。

第1回の実践ワーク 396Hzを5分だけ聴いて記録する

第1回の最後に、読者のための小さな実践を置いておきたい。用意するものは、396Hzの音源、静かな場所、メモ用紙だけである。音量は小さめにする。身体に響かせようとして大きな音にする必要はない。椅子に座り、足裏を床につける。横になる場合は、眠るためではなく、身体を休めるために聴く。最初の1分は、音をただ聴く。次の1分は、呼吸を観察する。次の1分は、身体の緊張している場所を一つ見つける。次の1分は、「今の自分にある恐れは何か」と静かに問いかける。最後の1分は、部屋の中を見回し、安全に感じるものを三つ確認する。終わったら、「落ち着いた」「重く感じた」「何も変わらなかった」「少し眠くなった」「胸がざわついた」など、正直に一行だけ記録する。良い反応をしようとしなくてよい。396Hzを聴く目的は、正しい体験をすることではない。自分の本当の反応に気づくことである。

次回予告

次回、第2回では「396Hzと脳・身体・感情──不安と罪悪感はどこに宿るのかを音楽療法から考える」を扱う。音は耳で聴くものでありながら、実際には脳、身体、自律神経、記憶、感情に深く関わっている。不安は頭の中だけにあるのではない。罪悪感も、単なる思考ではない。それらは胸、喉、腹、肩、背中、呼吸、姿勢に宿る。第2回では、音楽療法や心理学の知見を踏まえながら、396Hzがなぜ「考える不安」から「感じられる不安」へ移行する手がかりになりうるのかを考察する。

参考文献・関連資料

American Music Therapy Association. What is Music Therapy?
音楽療法を、資格を持つ専門家が治療関係の中で個別目標に向けて用いる臨床的・エビデンスに基づく音楽介入として定義している。
https://www.musictherapy.org/about/musictherapy/

Akimoto, K., Hu, A., Yamaguchi, T., & Kobayashi, H. Effect of 528 Hz Music on the Endocrine System and Autonomic Nervous System.
528Hz音楽と440Hz音楽の比較を行った小規模研究であり、528Hz記事との接続を考えるうえで参考になる。
https://www.scirp.org/html/2-8204397_87146.htm

Music therapy for patients with depression: systematic review.
うつ病に対する音楽療法の効果を検討したシステマティックレビューである。
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC12451534/

Music therapy for the treatment of anxiety: a systematic review with multilevel meta-analyses.
不安に対する音楽療法の効果を検討したレビューである。
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC12179724/

鑑賞リンク:396 Hz – Pure Frequency
396Hzを単音として体験するための導入音源として使用できる。
https://www.youtube.com/watch?v=t7cg30hiVkE

鑑賞リンク:528Hz Pure Tone
528Hzとの聴き比べに使用できる。
https://www.youtube.com/watch?v=vRh04jz_30E

鑑賞リンク:J.S.バッハ《G線上のアリア》Voices of Music版
396Hzそのものではないが、低音の安定、旋律の持続、和声の秩序を体験するためのクラシック音楽として適している。
https://www.youtube.com/watch?v=pzlw6fUux4o

鑑賞リンク:アルヴォ・ペルト《Spiegel im Spiegel》
沈黙、反復、余白、祈りの感覚を体験するための作品として紹介した。
https://www.youtube.com/watch?v=TJ6Mzvh3XCc

参考リンク:Renaud Capuçon plays Arvo Pärt: Spiegel im Spiegel / Warner Classics
公式チャンネル系の演奏を使いたい場合の代替候補である。
https://www.youtube.com/watch?v=n37bNmVggtU

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投稿者プロフィール

市村 修一
市村 修一
【略 歴】
茨城県生まれ。
明治大学政治経済学部卒業。日米欧の企業、主に外資系企業でCFO、代表取締役社長を経験し、経営全般、経営戦略策定、人事、組織開発に深く関わる。その経験を活かし、激動の時代に卓越した人財の育成、組織開発の必要性が急務と痛感し独立。「挑戦・創造・変革」をキーワードに、日本企業、外資系企業と、幅広く人財・組織開発コンサルタントとして、特に、上級管理職育成、経営戦略策定、組織開発などの分野で研修、コンサルティング、講演活動等で活躍を経て、世界の人々のこころの支援を多言語多文化で行うグローバルスタートアップとして事業展開を目指す決意をする。

【背景】
2005年11月、 約10年連れ添った最愛の妻をがんで5年間の闘病の後亡くす。
翌年、伴侶との死別自助グループ「Good Grief Network」を共同設立。個別・グループ・グリーフカウンセリングを行う。映像を使用した自助カウンセリングを取り入れる。大きな成果を残し、それぞれの死別体験者は、新たな人生を歩み出す。
長年実践研究を妻とともにしてきた「いきるとは?」「人間学」「メンタルレジリエンス」「メンタルヘルス」「グリーフケア」をさらに学際的に実践研究を推し進め、多数の素晴らしい成果が生まれてきた。私自身がグローバルビジネスの世界で様々な体験をする中で思いを強くした社会課題解決の人生を賭ける決意をする。

株式会社レジクスレイ(Resixley Incorporated)を設立、創業者兼CEO
事業成長アクセラレーター

【専門領域】
・レジリエンス(精神的回復力) ・グリーフケア ・異文化理解 ・グローバル人財育成 
・東洋哲学・思想(人間学、経営哲学、経営戦略) ・組織文化・風土改革  ・人材・組織開発、キャリア開発
・イノベーション・グローバル・エコシステム形成支援

【主な著書/論文/プレス発表】
「グローバルビジネスパーソンのためのメンタルヘルスガイド」kindle版
「喪失の先にある共感: 異文化と紡ぐ癒しの物語」kindle版
「実践!情報・メディアリテラシー: Essential Skills for the Global Era」kindle版
「こころと共感の力: つながる時代を前向きに生きる知恵」kindle版
「未来を拓く英語習得革命: AIと異文化理解の新たな挑戦」kindle版
「グローバルビジネス成功の第一歩: 基礎から実践まで」Kindle版
「仕事と脳力開発-挫折また挫折そして希望へ-」(城野経済研究所)
「英語教育と脳力開発-受験直前一ヶ月前の戦略・戦術」(城野経済研究所)
「国際派就職ガイド」(三修社)
「セミナーニュース(私立幼稚園を支援する)」(日本経営教育研究所)

【主な研修実績】
・グローバルビジネスコミュニケーションスキルアップ ・リーダーシップ ・コーチング
・ファシリテーション ・ディベート ・プレゼンテーション ・問題解決
・グローバルキャリアモデル構築と実践 ・キャリア・デザインセミナー
・創造性開発 ・情報収集分析 ・プロジェクトマネジメント研修他
※上記、いずれもファシリテーション型ワークショップを基本に実施

【主なコンサルティング実績】
年次経営計画の作成。コスト削減計画作成・実施。適正在庫水準のコントロール・指導を遂行。人事総務部門では、インセンティブプログラムの開発・実施、人事評価システムの考案。リストラクチャリングの実施。サプライチェーン部門では、そのプロセス及びコスト構造の改善。ERPの導入に際しては、プロジェクトリーダーを務め、導入期限内にその導入。組織全般の企業風土・文化の改革を行う。

【主な講演実績】
産業構造変革時代に求められる人材
外資系企業で働くということ
外資系企業へのアプローチ
異文化理解力
経営の志
商いは感動だ!
品質は、タダで手に入る
利益は、タダで手に入る
共生の時代を創る-点から面へ、そして主流へ
幸せのコミュニケーション
古典に学ぶ人生
古典に学ぶ経営
論語と経営
論語と人生
安岡正篤先生から学んだこと
素読のすすめ
経営の突破口は儒学にあり
実践行動学として儒学に学ぶ!~今ここに美しく生きるために~
何のためにいきるのか~一人の女性の死を見つめて~
縁により縁に生きる
縁に生かされて~人は生きているのではなく生かされているのだ!~
看取ることによって手渡されるいのちのバトン
など
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